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zoom RSS シャープ元幹部が実名で明かす 日本のテレビが韓国製に負けた「本当の理由」 週刊現代

<<   作成日時 : 2012/07/18 01:43   >>

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 日本を代表する電機メーカーが軒並み巨額の赤字に陥っている。経営者たちは円高や欧州不況など外部環境のせいにするが、言い訳に過ぎない。トップが舵取りに失敗し、決断を間違えた瞬間があった。

絶頂からあっという間に転落

 '07年に社長となった片山幹雄さんの下で、シャープは大阪・堺市にあった新日鐵の工場跡地に液晶パネルと薄膜太陽電池の超巨大工場を新設しました。

「グリーンフロント堺」と名付けられたこの巨大工場に投じられた資金は、協力会社の分も合わせると実に1兆円。うち3800億円が第10世代と呼ばれる最新鋭の液晶パネル製造工場への投資でした。

 液晶ディスプレイの性能と価格を決定する大きな要因は、いかに大型のパネルを作れるかです。堺工場は、40〜60インチの大型ディスプレイの市場が立ち上がることを予測して建設されたものでした。三重県・亀山工場で成功した、液晶ディスプレイからテレビまで一貫して生産する「垂直統合」モデルを、更に進化させた「究極の垂直統合工場」でした。

 それから4年---。パナソニックにソニー、そして私の古巣であるシャープは、今年、社長交代に踏み切りました。いずれの会社も巨額の赤字に対して責任を取ったものですが、赤字の主な原因は薄型テレビ事業での韓国企業に対する敗北です。

 2011年第4四半期における薄型テレビの収益における世界シェアは、トップが韓国・サムスン電子の26・3%、次いで韓国・LG電子の13・4%。日本勢はソニーが3位の9・8%、4位パナソニック6・9%、5位シャープ5・9%なので、3社合計でサムスン1社に及ばない状況です。

 テレビ事業が苦しいのは日本企業だけではありません。急激な価格低下により多くのメーカーが赤字と言われていますが、このまま競争が進めば韓国勢だけが勝ち残り、日本メーカーは早晩市場から姿を消してしまうかも知れません。

 そうした苦境を反映し、パナソニックの津賀一宏新社長は「もはやテレビは中核事業ではない」とおっしゃいました。

 しかし私はそうは思いません。テレビは、各家庭に最低1台以上は普及し、家族がその前で多くの時間を共有するという他には例のない電気製品です。家電メーカーにとってテレビはこれからもキーとなる製品であり続けるはずで、パソコンやゲームに置き換わるようなものではありません。

 ただ、国内メーカーがそこまで追い込まれているのも事実です。では、なぜ国内メーカーの薄型テレビがほんの数年でこれほどの苦境に陥ったのか。その失敗の本質を探るには、液晶ディスプレイと液晶テレビ、それぞれの敗因について分析しなければなりません。まず第1の液晶ディスプレイでの最大の敗因は、「投資戦略の失敗」に行き着きます。

独自技術を徹底的に隠す

 中田行彦氏(65歳)。シャープで長年、液晶や太陽電池事業に携わった技術者でシャープアメリカ研究所研究部長も務めた。現在は立命館アジア太平洋大学で技術経営を研究・教育するアジア太平洋イノベーション・マネジメント・センター長。

 電機メーカーの基幹であるテレビ事業で、どうして日本勢は海外に負けたのか。中田氏に聞いた。

 薄型テレビのディスプレイで主流となっている液晶パネルについて、1998年から2003年までのこの事業の「営業利益と設備投資額」の関係を見ると日本勢の失敗は一目瞭然です。

 日本のメーカーの行動原理は、「利益が出た翌年には設備投資を行うが、赤字になったら絞る」というもので、リスクを嫌うサラリーマン社長的な発想でした。

 それに対して韓国メーカーは、営業損益の状況にかかわらず安定的に設備投資をしてきました。特にサムスン・グループでは、李健熙会長が長期的なビジョンに基づき、液晶事業に集中投資していました。

 同じく台湾勢の投資姿勢も戦略的で、'03年の台湾の液晶メーカーの営業利益は500億円程度でしたが、その年の設備投資額は実に5000億円を超えていた。しかも、韓国勢や台湾勢が設備投資をして建設した工場は、第5世代と呼ばれる当時最新鋭の工場でした。

 こうした投資戦略の違いは、シェアに如実に表れました。'97年には日本は液晶で約80%のシェアを握っていましたが、'06年には12%へと急落したのです。これがまさに、日本の家電メーカーのほとんどが、薄型テレビ向け液晶ディスプレイの競争から転げ落ちた瞬間でした。

 そうした中で、日本で唯一気を吐いていたのが実はシャープでした。'98年に社長になった町田勝彦氏が「'05年にはシャープのテレビをすべて液晶にする」という明確なビジョンを打ち出したのです。

 また、シャープはアモルファスシリコン薄膜を利用した太陽電池事業に取り組んでいたのですが、これが失敗に終わっていました。ただ、太陽電池の薄膜技術は液晶の薄膜トランジスタ技術に非常に近いものがあります。そこでアモルファスシリコン薄膜の技術者を液晶事業に大量に振り向けた。私もその一人ですし、前社長の片山幹雄さんもそうでした。つまり薄膜太陽電池の失敗を液晶の人材育成・供給に活かしたのです。

 ただその私からしても、「ブラウン管テレビをすべて液晶に置き換える」という当時の町田社長のビジョンは、「さすがに無理だ」と思いました。液晶テレビを製品化しても、ブラウン管テレビに比べ価格が5倍ほどはする時代でしたから。


しかし町田社長のビジョンは当たりました。'99年に世界初の20型の液晶テレビを発売すると、'02年には三重県・亀山に第6世代という大型液晶パネル工場を新設すると共に、液晶テレビの組み立て工場をもつ「垂直統合」モデルを取りました。'06年には第8世代の亀山第2工場も稼働させました。

 亀山の工場は韓国や台湾のライバルにキャッチアップされないために、液晶パネル工場内の立ち入りを制限したり、独自技術は特許化せずに工場内で秘匿したりという「ブラックボックス戦略」を取りました。ただ液晶テレビの組み立ては「請負」に出すなど、クローズドにするところとオープンにするところを分けた戦略を取っていました。その結果、「亀山工場製」と工場名がブランドになるほど、薄型テレビは大ヒットし、シャープの業績を飛躍的に伸ばしたのです。

 ではこの間、他の国内家電メーカーはどうしていたのか。ソニーは、フラット型ブラウン管テレビ「ベガ」での成功体験から、独自の平面ディスプレイを研究・開発しませんでした。これは技術経営上、大きな問題でした。

顧客の気持ちを見失った

 ソニーはここで大きく出遅れたため、テレビの主流が薄型平面ディスプレイに切り替わったときには、単独での薄型パネル生産ができず、早急に薄型パネルを安定確保するためサムスンとパネルの合弁事業を立ち上げました。この合弁事業は、ソニーがテレビの世界シェアを維持するため大きな成果がありました。しかし供給過剰から液晶パネルの価格が急落すると、合弁会社から高値で調達せざるを得ず、テレビ事業の苦戦を招いたのです。結局、ソニーはこの合弁事業を730億円でサムスンに売却しました。

 日本を代表する家電メーカー・パナソニックは、液晶ではなく、プラズマディスプレイで薄型テレビを生産する道を選びました。これは当時の中村邦夫社長の決断ですが、その当時は液晶よりプラズマのほうが安くて大画面のディスプレイを製造できる可能性があったのです。

 しかし、プラズマディスプレイのほうが生産が難しいところがあり、追随する有力メーカーが登場しなかったことから、パナソニックが調達しなければならない周辺部材の価格も十分に下がりませんでした。

 しかもプラズマへのこだわりは二重投資≠招くことになります。携帯電話やパソコンの中小型にはプラズマは使用できず、液晶が使われています。そのことから携帯電話事業もパソコン事業も抱えるパナソニックはプラズマパネルだけでなく、液晶パネルの工場も持たなければなりませんでした。この二重投資が足かせになりました。

 一方、薄型テレビの価格が急激に低下し、取り巻く環境も激変しました。ここで第2の敗因となる、薄型テレビでの「自国至上主義、自前主義」へのこだわりが顔を覗かせます。




 当時は、韓国や台湾のメーカーがある程度の品質で低価格の液晶ディスプレイを猛烈な勢いで売り出し、世界中で支持を集めている時期でした。それでもシャープは液晶事業にさらに集中していきました。その一大事業として、前述した堺工場への投資が実行されたのです。

 しかし、急激な価格低下に対して、シャープの市場予測は脆くも崩れます。そもそも堺工場が得意とする大型ディスプレイは、十分な収益が上がるほどの規模に市場が育っていなかったのです。世界的な液晶パネルの価格下落もあり、堺工場の稼働率は50%ほどという惨憺たるものになってしまっています。部材から最終製品まで全て国内工場で生産するという垂直統合モデルは、「自国至上主義、自前主義」に固執したもので、グローバル時代に適合しなくなっていたのです。

 かつて地上を支配した恐竜は、その巨体ゆえに気候の変動に適応できず滅んでいきました。堺工場もまさに「巨大になりすぎた恐竜」と同じように、市場の環境変化に適応できなかったのです。この巨額の投資負担が、経営の屋台骨を揺るがすことになってしまいました。

 シャープの技術戦略にも問題がありました。従来の3原色のディスプレイを進めて、4原色とした「クアトロン」テレビを発売したのもこのころです。それまで以上の高品位な画像が実現できる、という触れ込みでした。しかし実際にその映像を見ても、液晶のプロである私でさえ、3原色から4原色に変わったことでどれほど画質がよくなったのか分からなかった。このとき私は「顧客志向」の研究・開発が出来ていないと感じました。すでにこの頃は、顧客は品質にほぼ満足し、価格でテレビを選んでいたからです。

 その結果、シャープは、アップル製品の組み立てを受託する世界最大の巨大EMS(受託製造サービス)企業である台湾・鴻海精密工業の出資を受け入れ、この堺工場を鴻海との合弁事業とする苦しい決断を余儀なくされることになったのです。

 同じくパナソニックは、'09年12月に、兵庫県にプラズマディスプレイの尼崎第5工場を建設しました。しかし、'11年10月には生産能力をほぼ半減する方針を出しました。

カネの使い方を間違えた

 では、薄型テレビで、パナソニックの尼崎工場、シャープの堺工場への大型投資を決めた判断は、間違いだったのでしょうか。

 大型の設備投資を決断してから工場が立ち上がるまでは2年くらいのタイムラグがあります。その間に、市場の環境がガラリと変わってしまうというのはよくあること。それほど経営判断とは難しいものなのです。自前主義にこだわらず、グローバル化を考えて、リスクを軽減すべきでした。

 では、日本の家電メーカーの将来はどうなるのでしょうか。




 テレビ事業に焦点をあてて将来を予測すれば、韓国のサムスンとLGは、今年1月の米国消費者エレクトロニクスショーに、55・の有機ELディスプレイを用いたテレビを発表し、今年発売するとしています。

 有機ELテレビは、簡単に壁に掛けられる程度の薄さと軽さが特長で、次世代の薄型テレビの本命と言われています。しかし有機ELの市場は、まだどうなるか分かりません。現在、液晶のテレビもどんどん薄くなり、壁に掛けられるからです。少しの厚さの差は顧客に価値をもたらしません。顧客が選ぶ基準は、「どちらが安いか」にかかります。「顧客志向」の技術開発が必要です。

 何より、サムスンの方式では、現在の有機ELは、青色の発光体の寿命が短く、顔が赤みがかってくる可能性があります。携帯電話のように、4〜5年で新機種に買い換える用途なら問題ないでしょうが、テレビのように10年間は買い換えないという用途にはまだ問題があります。また、LGの方式は、ディスプレイをそれほど薄くできません。しかし、技術開発にはこのようなリスクは付きものです。

 ソニーとパナソニックは、有機ELテレビの開発で提携し、量産技術の確立に協力すると発表しています。いつ市場に出せ、収益に寄与できるかが課題です。このため、韓国メーカーが、どのようなものを、いつ、いくらで、市場に出すかを注視する必要もあります。

 私は、日本の家電メーカーがテレビ市場で復権する一つの道は、100インチ程度の超大型テレビを、低価格で売り出し、新しい市場を創造することだと考えています。米国で既に90インチのテレビが発売されました。

 売れ筋の32インチ程度の製品は、もはや消費財化しており、価格の下落に歯止めがかかりません。しかし、一度大きな画面に馴れた人は、小さいテレビでは満足できなくなります。

 シャープは、鴻海との提携により、お互いの長所を活かし補いあえる「国際水平分業」ができます。堺工場で作った大型ディスプレイを、鴻海のノウハウで低価格のテレビに仕上げれば、超大型テレビの市場を創造できます。

 現在、シャープと鴻海との間で厳しい交渉が行われていますが、どれだけ理想に近い提携関係を構築できるかで成否が分かれます。

 薄型テレビを例に日本の製造業の敗因を分析すると、「投資戦略」と「自前主義」に行き着きました。日本の家電メーカーが同じ轍を踏まずに競争力を維持していくためには、国際的に協力関係を結んだ企業間で知識や技術を摺り合わせる「インテグラル化」を進めて、高度な知識創造を行うこと。そして、製造では「グローバル化」を大胆に推し進めることが必要だと思います。

「週刊現代」2012年7月21・28日号より

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