軍幹部「尖閣棚上げ発言」の狙い
今月2日、中国人民解放軍の戚建国副総参謀長は、
シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、
いわば「尖閣問題」にかんする「棚上げ論」を持ち出した。
去年9月の尖閣国有化以来、
中国当局は時々「棚上げ論」をぶち上げて
日本に対する揺さぶりをかけてきたが、
その都度、日本政府によって拒否された。
今になって中国は再びこの「論外の論」を言い出したのは一体なぜなのか。
戚副総参謀長の発言が行われた6月2日というタイミングからすれば、
それは当然、6月7日から始まる米中首脳会談とは無関係ではないと思う。
習氏は異例の早期訪米を急いだ理由の一つは、
日本の安倍政権の展開する「中国包囲網外交」への危機感にあろう。
去年12月に安倍政権は発足以来、
「対中国包囲網」の構築を意図する周辺国外交を精力的に展開してきている。
まずは今年の1月12日、岸田文雄外相が豪州を訪問して
安保協力の拡大を含めた戦略的パートな関係を強めた。
1月16日から、安倍晋三首相自身はベトナム、タイ、インドネシアの三カ国を歴訪し、
安全保障分野での連携も含めた諸国とのの関係強化に務めた。
そして4月29日、安倍首相はモスクワで日露首脳会談に臨んだが、
その中で、両国は今後、外務・防衛担当閣僚による
安全保障協議委員会(2プラス2)を設置することを合意した。
日露両国が安全保障上の連携を始めたことはまさに画期的な出来事である。
そして5月29日、インドのシン首相の訪日に際して発表された日印共同声明では、
「海上保安庁とインドの沿岸警備隊との連携訓練」
などの項目を含めた安全保障上の連携強化が訴えられた。
このようにして、安倍政権はこの5月間、肝心の「安全保障」の分野において、
中国大陸を囲む諸国との連携強化を図ってきたわけだが、
それは「中国」を強く意識した戦略上の連携であるとは言うまでもない。
少なくとも中国側から見れば、このような動きは
明らかに中国の封じ込めを意図した包囲網の構築を意味している。
包囲されたことへの中国の孤立感と危機感が相当なものであろう。
そこで習近平政権は、「包囲網突破」のために
何とかしなければならないと躍起になっているが、
彼らの定めた最大の「突破口」はやはり対米外交だ。
つまり、日本を含めたアジア諸国に大変な影響力を持つ米国を説得して
中国の味方につけておくことによって
劣勢挽回の中央突破をはかろうとしているのである。
そのために急遽に決めた米中首脳会談を成功させるためには、
中国側は用意周到の準備に取りかかっている。
先月24日に中国は北朝鮮の特使を北京に呼んできて
「対路路線に戻る」と言わせたのもオバマ大統領を喜ばせるための
「訪米準備」の一つだと理解すべきであろうが、
冒頭から触れた戚建国副総参謀長の「尖閣棚上げ」発言の真意も
まさにそこにあるのではないかと思う。
要するに中国側は、いわば「領土問題」にたいする「柔軟姿勢」を示したことによって
「中国はアジアの安定と平和維持に積極的だ」とのことを、
米国のオバマ大統領にアピールしておきたいのである。
そして、日本側は「領土問題が存在しない」との立場から
「棚上げ論」を再び拒否すれば、習近平氏はそれで、
「問題は中国にあるのではなく日本にあるのだ」との趣旨のことを
オバマ大統領に訴えて責任を日本側に押し付けることも出来るのである。
件の「棚上げ発言」はまさにこのような文脈のなかで旅出したものであろうが、
その一方、この「棚上げ発言」が行われた6月2日当日、
中国の海洋監視船3隻は依然として
尖閣沖の接続水域に踏みとどまって航海している。
いわば「領土問題解決」への中国側の「誠意」はまったく疑わしいものである。
( 石 平 )
シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、
いわば「尖閣問題」にかんする「棚上げ論」を持ち出した。
去年9月の尖閣国有化以来、
中国当局は時々「棚上げ論」をぶち上げて
日本に対する揺さぶりをかけてきたが、
その都度、日本政府によって拒否された。
今になって中国は再びこの「論外の論」を言い出したのは一体なぜなのか。
戚副総参謀長の発言が行われた6月2日というタイミングからすれば、
それは当然、6月7日から始まる米中首脳会談とは無関係ではないと思う。
習氏は異例の早期訪米を急いだ理由の一つは、
日本の安倍政権の展開する「中国包囲網外交」への危機感にあろう。
去年12月に安倍政権は発足以来、
「対中国包囲網」の構築を意図する周辺国外交を精力的に展開してきている。
まずは今年の1月12日、岸田文雄外相が豪州を訪問して
安保協力の拡大を含めた戦略的パートな関係を強めた。
1月16日から、安倍晋三首相自身はベトナム、タイ、インドネシアの三カ国を歴訪し、
安全保障分野での連携も含めた諸国とのの関係強化に務めた。
そして4月29日、安倍首相はモスクワで日露首脳会談に臨んだが、
その中で、両国は今後、外務・防衛担当閣僚による
安全保障協議委員会(2プラス2)を設置することを合意した。
日露両国が安全保障上の連携を始めたことはまさに画期的な出来事である。
そして5月29日、インドのシン首相の訪日に際して発表された日印共同声明では、
「海上保安庁とインドの沿岸警備隊との連携訓練」
などの項目を含めた安全保障上の連携強化が訴えられた。
このようにして、安倍政権はこの5月間、肝心の「安全保障」の分野において、
中国大陸を囲む諸国との連携強化を図ってきたわけだが、
それは「中国」を強く意識した戦略上の連携であるとは言うまでもない。
少なくとも中国側から見れば、このような動きは
明らかに中国の封じ込めを意図した包囲網の構築を意味している。
包囲されたことへの中国の孤立感と危機感が相当なものであろう。
そこで習近平政権は、「包囲網突破」のために
何とかしなければならないと躍起になっているが、
彼らの定めた最大の「突破口」はやはり対米外交だ。
つまり、日本を含めたアジア諸国に大変な影響力を持つ米国を説得して
中国の味方につけておくことによって
劣勢挽回の中央突破をはかろうとしているのである。
そのために急遽に決めた米中首脳会談を成功させるためには、
中国側は用意周到の準備に取りかかっている。
先月24日に中国は北朝鮮の特使を北京に呼んできて
「対路路線に戻る」と言わせたのもオバマ大統領を喜ばせるための
「訪米準備」の一つだと理解すべきであろうが、
冒頭から触れた戚建国副総参謀長の「尖閣棚上げ」発言の真意も
まさにそこにあるのではないかと思う。
要するに中国側は、いわば「領土問題」にたいする「柔軟姿勢」を示したことによって
「中国はアジアの安定と平和維持に積極的だ」とのことを、
米国のオバマ大統領にアピールしておきたいのである。
そして、日本側は「領土問題が存在しない」との立場から
「棚上げ論」を再び拒否すれば、習近平氏はそれで、
「問題は中国にあるのではなく日本にあるのだ」との趣旨のことを
オバマ大統領に訴えて責任を日本側に押し付けることも出来るのである。
件の「棚上げ発言」はまさにこのような文脈のなかで旅出したものであろうが、
その一方、この「棚上げ発言」が行われた6月2日当日、
中国の海洋監視船3隻は依然として
尖閣沖の接続水域に踏みとどまって航海している。
いわば「領土問題解決」への中国側の「誠意」はまったく疑わしいものである。
( 石 平 )
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