中国共産党、ゴルフ禁止令の深層 他者との不適切な性的関係もNGに

連載:大前研一のニュース時評

 党員のゴルフまで禁じた習近平氏。“取り締まり”はエスカレートする一方だ(ロイター)

 中国国営通信の新華社によると、中国共産党は党員8800万人が守るべき新たな行動基準を導入する。党員の不倫などはこれまでも禁じられていたが、新規定では「ぜいたくな飲食」や「他者との不適切な性的関係」に加えて、ゴルフも禁止した。

 違反した場合の罰則は明記されていないが、新規定は刑法に優先するという。つまり、刑法よりきつい罰を共産党の判断で受けることもある、ということなのだろう。

 中国は今年3月、66ものゴルフ場の閉鎖を発表した。国内の全ゴルフ場の約1割が突然閉鎖されたことに、驚いた覚えがある。

 民間資本、特に台湾や香港の資本で素晴らしいゴルフ場が造られていた。それがいきなり「ぜいたくだ」と66カ所を閉鎖するというのは、普通では考えられない。これでは今後、だれもリゾートや娯楽施設に投資する気がなくなるのではないか。2022年には北京で冬季オリンピックが開催される予定なので、それまでにスキー場などの開発が期待されていたが、ブレーキがかかるかもしれない。

 たしかに、公金を使ってゴルフ場の会員権を所有したり、会員権をプレゼントとして受け取ったり接待されたり…と、自分のカネでゴルフをしている党員はほとんどいなかったのだろう。

 また、「他者との不適切な性的関係」というのは、いわゆる「19番ホール」の接待も含んでいる。そういったことが全部禁止になったわけだ。
 実は韓国でも何年かに1回、財閥に対して「ゴルフはぜいたくだ」という批判が出ている。かつて私も韓国の財閥人とゴルフをしたことがあるが、彼らはだいたい日本でゴルフをする。韓国でやると、すぐに見つかって「ぜいたくだ」と非難されてしまうからだ。

 自分のゴルフ場を所有しているのに、ソウルから北海道に飛んで、新千歳空港近くのニドムクラシックなどで気が済むまでゴルフをやる。かわいそうだなと思った。今後、中国でもこういうことが起こるかもしれない。

 もうひとつ、中国人の「ぜいたくな飲食」について、香港でレストランを営んでいる知人から一端を聞いたことがある。

 そこは客単価125ドルぐらいの店だが、ある日、中国人の客が10人くらいでやってきて、何を食べたいとは言わず、「1人500ドルでやってくれ」と言う。「そんなメニューはありません」と言っても、「いいから、500ドルでやれ」。カネを握った中国人というのは、そのカネの重みをエンジョイしたいのだろう。

 しかし3年前、習近平国家主席が最高指導者となって以降、役人の汚職取り締まりが強化されている。大物幹部に対する「トラ狩り」も、小物への「ハエたたき」も、海外に逃げた幹部を追跡する「キツネ狩り」も必要なことだろう。

 だが、ゴルフまでぜいたくだ、と断じてしまうのは成熟国家では考えられない。規律を正す「文化大革命」が新しい形で進行している、と見た方がいいのかもしれない。

 ■ビジネス・ブレークスルー(スカパー!557チャンネル)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。


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